愛を餌に罪は育つ
注文したコーヒーがテーブルの上に置かれたが、紅はそれに手をつける前に手に持っていた茶封筒をテーブルの上に置いた。


梓が手を伸ばし封筒を取ろうとすると、紅は封筒を手で押さえまだ渡せないとでも言いたげな顔をした。


梓の手も封筒の上にのっているが、無理矢理取ろうとはしなかった。



「先ずは説明して。これは何の為に鑑定したの?」

「確証が欲しかったの」

「確証?」

「――涼子(リョウコ)の子供の父親だっていう確証。私がどうこうする事じゃないかもしれないけど、彼には涼子にも子供にもちゃんと謝ってもらいたい」



紅はため息を漏らし、少し辛そうな顔をして梓に尋ねた。



「涼ちゃんからは子供の父親の事は聞いてないの?」

「涼子の口から直接聞いたわけじゃないよ。手紙を見ちゃったんだ――私宛てに書かれた手紙。切手も貼ってあったのに抽斗に入ってて――私の性格を誰よりも知ってるから、出せなかったのかもしれない。怒って相手の所に怒鳴り込みに行っちゃうかもしれないから――」



梓はコーヒーに映る自分の顔を見つめ、悲しそうに微笑んだ。


それは後悔の念に苛まれている様な表情にも見えた。






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