愛を餌に罪は育つ
梓は紅の顔を見て、申し訳なさそうに微笑んだ。



「ごめんね、迷惑かけて」

「今に始まったことじゃないでしょ。謝罪の言葉より今梓が何をしようとしてるのか教えて欲しい」



梓は目を伏せ黙り混む。


端から見れば二人は喧嘩している様に見えるかもしれない。



「涼子って、思い込み激しいところがあったでしょ?いい意味でも悪い意味でも」

「そうだね。二人してよく振り回されてたよね」

「涼子が高校一年生の時、大泣きしながら私に電話してきた時の事覚えてる?」

「覚えてるよ。あの時の涼ちゃんは暫く世界の終わりみたいな顔してたからね」



二人ともその時の事を思い出しているのか、クスクスと声を漏らしながら笑っている。


梓は頬杖をつき、スプーンでコーヒーをクルクルとかき混ぜた。



「妊娠したかもしれないって大騒ぎになったよね。ただの勘違いで終わったけどさ。だけどそれで涼子は味をしめちゃったんだよね――誰と付き合おうと、相手の態度に不安を感じると妊娠したって嘘をつくようになった」

「好きな人を失わないが為の手段。そんなの一時的な方法でしかないのに、私たちがどれだけそんなやり方間違ってるって言おうと涼ちゃんは聞こうとしなかったよね」






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