愛を餌に罪は育つ
梓は鞄の中からはがき程の大きさの封筒を取りだし紅に渡した。


その封筒の宛名は梓の名前が書かれており、住所は梓の実家の住所が書かれていた。


裏には森川 涼子と書かれている。


俯いてコーヒーを飲んでいる梓を尻目に、紅は封筒から手紙を取りだし読み始めた。



お姉ちゃんへ

私、今好きな人がいるの。
その人――朝陽には彼女がいて、私と彼はただ体の関係があるだけ。
傍にいられるならそれでもいいって最初は思ってた。だけど、やっぱり辛くて彼の彼女が憎くて堪らなくなった。
それで、どんな人なのか気になって調べたの。でも調べなきゃよかったって思った。
惨めな気持ちになるくらい綺麗で可愛らしい人だったから。
それでも、彼を独り占めしたい気持ちはどんどん大きくなった――。そんな時妊娠してる事に気付いたの。
これできっと彼は私だけを見てくれる。
来週の私の誕生日に彼に報告しようと思ってる。
上手くいくようお姉ちゃんも祈っててね。

涼子



その手紙には胎児が写っているエコー写真も一緒に添えられていた。






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