愛を餌に罪は育つ
食事が運ばれてきて私たちは日記とは関係のない話をしていた。


体調の事だったり仕事の事だったり、色んな話をした。


だけどどれも私の事ばかりで、笠原さんは自分の話をしようとはしなかった。


当たり前だけど笠原さんとの間に引かれた一線が濃くハッキリと見えるようだった。



「日記の話をしてもいいですか?」

「はい、お願いします」



食べ終えたパスタのお皿を脇に避けると、笠原さんはペンと手帳を持っていつでも書きこめる体勢を取った。



「ストーカーの被害に遭う一年くらい前から朝陽とは付き合ってたみたいです。でも、朝陽はストーカーじゃないと思うんです」

「どうしてそう思ったんですか?」

「浮気、してたみたいなので――今も続いてるかもしれませんけど。そんな人がストーカーなんてするとは思えないんです」



店員が私たちのテーブルにのっている空いた食器を下げ、食後のドリンクを置いてくれた。


私はカプチーノに角砂糖を一つ入れ、スプーンでゆっくりかき混ぜた。


スプーンに当たる角砂糖の感触で段々溶けているのが分かる。





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