愛を餌に罪は育つ
朝陽の戸惑ったような小さな声が漏れた。



『な、に――言ってる、の?』

「中途半端な気持ちのままここに居たくないの」



腕を掴まれ勢いよく引っ張られ、手に持っていた食器が滑り落ち、シンクの中で大きな音を立て割れてしまった。


お気に入りのお皿だったのに。



『僕の目を見てッッ美咲ッッ!!』

「――――」



必死に叫ぶ朝陽に対して私の心は冷静だった。


割れた食器から目線を外さないでいると、無理矢理朝陽の方へ顔を向けさせられた。


涙目になっている朝陽。


そして私の顔を両手で包みこみ顔を近付けてきた。


私は朝陽の体を押し退け逃げるように走った。


だけどすぐに追い付かれてしまい、朝陽に手首を掴まれそのまま倒れこむように床に押さえつけられてしまった。


一瞬頭に痛みが走り、頭の中に映像が流れ込む。


前にも――同じような事があった。


でも誰だか分からない。


私はその時どうなったの?






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