愛を餌に罪は育つ

ホテル

秘書室――私だけしかいない静かな空間。


今の私には唯一気を安らげる事のできる場所かもしれない。


自席の直ぐ横には普段は置かれていない大きなボストンバッグが置かれている。


昨日私は虚しくも朝陽に抱かれてしまった。


唯一できた抵抗といえば、声を圧し殺し人形の様にしていることだった。


泣くことも止め、表情も変えずただされるがまま横になっていた。


それでも朝陽は事を終えるまで私の体を堪能していた。


今日は朝陽が寝ている隙に数日分の洋服や下着をボストンバッグに詰め、始発の時間に家を出た。


一人でいても、下腹部に微かな痛みを感じるたび昨日の出来事を思い出す。


副社長と私はただの上司と部下の関係なのに、勝手に後ろめたさを感じてしまった私は、まともに副社長の顔を見ることが出来なかった。


副社長は幸い今日は終日外出で戻ってはこないから、今日はもう顔を合わせる心配はない。






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