愛を餌に罪は育つ
視線を落とした副社長の表情は険しくなった。


その視線は私の手首へ向けられていた。



『何があった』

「あの――私の不注意で――ですから、お気になさらないで下さい」



副社長は私の腕から手を離すと、次は反対の腕を掴み袖を少し捲り上げた。


昨日両手首を掴まれていたからどちらの手首にも痕がついてしまっている。



『不注意でこんな痕が?増田さんが君は社内の男性陣から人気があると言っていたが、社内の者を庇っているんじゃないのか』

「違いますッッ。皆さんには本当に良くしてもらっていて、そんな事をするような方は一人もいらっしゃらないですッッ!!」


『そうか――だが、私に話せないのなら警察に行くべきだ。誰が見てもこの痣は普通じゃないと思うだろう』



私はなんて説明すればいいのか分からなかった。


なんて説明すれば副社長は納得してくれるだろう。






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