愛を餌に罪は育つ
悪戯で誰かが放火したの?


それとも……恨みを買ってた、の?


いくら考えても記憶のない私に分かることなんて何一つなかった。


それが無性に悔しくも感じ、ある意味記憶がなくて良かったのかもしれないとも感じる。


記憶があったらもっと辛い気持ちになっていたと思うから――。



『先生は、大野さんの記憶喪失は精神的なショックからだと言うとりました』

「――はい」

『何かを見てしまったんかもしれません』

「何か?」

『犯行現場に居合わせてしまったとか――まぁ、色々と考えられます』



正直何を聞かれようが、何を言われようが今の私に分かることはない。


分かるのは山田さんと笠原さんが言っている意味だけ。



「火炎瓶を投げた犯人を見て、私が一人で逃げ出したって言いたいんですか?家族をッッ見捨てて!!一緒に部屋にいたとしても私だけ生きてるって事は逃げ出したんですよね――私ッッ」



どう考えても自分が生きているのは一人で逃げ出したからだと思わずにはいられなかった。


家族は私を恨んでいるかもしれない――もしかすると私が恨まれて起こった事なのかもしれない――――。






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