愛を餌に罪は育つ
やっぱり朝陽がストーカーだったんだろうか。


だけどもしそうなら可笑しな点が色々ある。


浮気の件もそうだけど、ストーカーの暫く会えなくなるという手紙の後も日記を読む限り朝陽とは普通に会っている。


他の人間がストーカーだとすれば、更に秋さんを危険な目に遭わせてしまう確率が大きくなる。


そんなの――ッッ。



『必ず守ってみせる。だからそんなに辛そうな顔をするな』

「秋、さん」



秋さんは私の頬を両手で包みこむと安心させるように微笑んで見せてくれた。


恐怖で冷え始めていた心がまた温まっていく様だった。


この温もりを失いたくない。



「ご自身の事もちゃんと大切にして下さい。私一人が無事でも、そんなの少しも嬉しくありません」

『あぁ、そうだな』



社内にはまだ他の社員も残っているかもしれない為、私たちはいつも通り副社長とその秘書として静かな社内を歩いた。


いつもと違うところがあるとすれば、私が手に持っている大きなボストンバッグぐらいだろう。


近いうちにストーカーの事もちゃんと話そう。


秋さんならどうにか解決してくれる――そんな気がする。






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