愛を餌に罪は育つ
地下の駐車場から秋さんの車に乗って外へ出た。


誰にも見られないよう後部座席に乗って。



『荷物を持って出てきたようだが、行く宛はあるのか?』

「いえ、暫くはビジネスホテルにでも泊まろうかと思ってます。一人で部屋を借りるよりも安心できそうなので」



セキュリティのあるマンションに住んでもあまり意味がないような気がする。


ホテルなら常に人がいるし、不安な時はロビーにいればいい。


本当はちゃんとしたホテルの方がいいんだろうけど、出来れば両親が残してくれたお金を無駄遣いしたくない。



「あの、ビジネスホテルなら何処でもいいですから、適当な場所で降ろして下さい」

『私が決めていいんだな?』

「はい、ビジネスホテルなんてどこも大差はないでしょうから」



後部座席から見る秋さんの横顔はなんだか新鮮だった。


誰を気にすることなく好きな人を見詰められるこの一時は今の私にとって癒しの一時だった。





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