愛を餌に罪は育つ
会社を出て三十分ほど経ったが、秋さんはまだ車を走らせている。


その間ビジネスホテルはあったのに、見掛けたホテルは全て素通りしてしまった。


気付いてないって事はないと思うんだけど――。


それか、会社でよく利用しているビジネスホテルがあるのかもしれない。


窓から外を眺めていると、車が信じられない所へ入っていき、私は慌てて秋さんに声を掛けた。



「あ、あのッッ!!まさかこのホテルじゃないですよね!?」

『このホテルでは不満か?』

「こんなに素敵なホテルに不満なんてありません!!でもこんなに高級なホテルじゃなくて、本当に普通のビジネスホテルで十分ですから」



特別な日でも何でもないのにこんな一流ホテルに泊まるなんて出来ないよ。


秋さんと恋人になれた日だから特別な日ではあるのかもしれないけど、それにしても普通のOLが気軽に泊まれるような所じゃない。


それにこれじゃお金も早々になくなってしまう。


分かってはいたものの、秋さんとの金銭感覚の違いには驚かされる。






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