愛を餌に罪は育つ
秋さんは車を駐車場に止めるとシートベルトを外し、私のいる後部座席へと体を向けた。



『ビジネスホテルでは私が心配で落ち着かない。ここはよく利用しているホテルだから信用もできる。私の為にここに泊まってくれないか?』

「でも――」



こんなホテルに私みたいなのがいたら場違いだよ。


秋さんがいつも利用しているホテルなら尚更泊まる訳にはいかない。


私のせいで秋さんの品格を落としてしまいたくない。



『私の我儘だ。宿泊費などの費用は気にする必要はない』

「そういう問題じゃありません。こんなに素敵なホテルで私が秋さんの隣に居たらご迷惑をお掛けしてしまいます」

『そんな事はない。君は私が選んだ女性なんだから堂々としていればいい』



そう言いながら頬を擦ってくれる秋さんの手はとても温かかった。


堂々と、か――。


そう言われてもすぐには気持ちや考えを切り替えられない。



『分かった。ここのホテルが駄目だと言うなら私のマンションへ連れていく』

「えっ!?」

『私のマンションならセキュリティも厳重だし、何より一緒にいられる』



まさかそんな事を言われるとは思っていなくて、カッと顔が熱くなってしまった。


まともに秋さんの顔が見られない。






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