愛を餌に罪は育つ
『行こうか』



そう言って車を降りる秋さんに置いていかれないよう私も慌てて車の外へ出た。


隣に並ぶと何も言わずに荷物を持ってくれる秋さん。


「自分で持ちます」と言おうと口を開くと、それを察したのか突然手を握られ、私は言おうとしていた言葉が頭から何処かに吹き飛んでしまった。


だけど嬉しそうに笑う秋さんを見て私も直ぐに嬉しい気持ちになってしまった。



『ここのスウィートル――』

「普通のお部屋じゃないと泊まりませんからね」



私は直ぐ様秋さんの言葉を遮った。


まさかとは思っていたが、こんな一流ホテルのスウィートルームに泊まるなんてとんでもない。


例え価値観が全然違ったとしても、お互いに受け入れながら上手く付き合っていけたらいいなって思う。



「秋さんがよく利用されてるホテルですから、スウィートルーム以外のお部屋もきっと素敵なんでしょう?」

『あぁ、どの部屋もきっと気に入るよ』



私は笑って秋さんの手をギュッと握り、寄り添うように隣を歩いた。


幸せ過ぎてにやけてしまいそうな顔を口を結んで我慢した。






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