愛を餌に罪は育つ
秋さんは煙草を吸い終わると、口を開いた。



『私はそろそろ行くよ』

「もう、ですか?」

『このままここにいたら理性が利かなくなりそうだからな』



私の頬に触れる秋さんの手の上に自分の手を重ねた。


確かに朝陽の事があって男性と体を重ねるのは怖い。


ただ傍にいてほしいと思ってしまうのは我儘な事なんだろうか。


秋さんは私の顔に手を添えたまま、額と額をくっつけた。



『君を大切にしたいんだ。分かってくれるね?』

「――はい」

『いい子だ』



秋さんに子供扱いされてもちっとも嫌じゃなかった。


むしろそれは特別な様な気がして嬉しかった。



「私はいつまでここにいればいいですか?」

『そうだな、私に敬語を遣わなくなったらここを出ようか』



秋さんが冗談っぽくそう言った為、私も少し笑い混じりに言葉を返した。



「そうですね。それじゃあここを出たら私はどこへ行けばいいですか?」

『ここを出たら一緒に暮らそう』



驚きのあまり目を見開くと、直ぐ目の前にある秋さんの目は優しい熱を帯びていた。



「早く敬語を止められるよう頑張ります。もっと秋さんの傍に居たいですから」



秋さんは私の額にキスを落とし心地いい強さで抱きしめてくれた。





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