愛を餌に罪は育つ
秋さんは『今日はゆっくり休むんだよ』と言うと、私の頬にキスをして部屋を出ていってしまった。


秋さんからもらった温もりが冷めてしまう前に、早くお風呂に入って今日はもう寝よう。


お風呂のお湯をためている間に少しでも荷物を整理しようと思い、ボストンバッグを開くと携帯の充電器が目に写った。


明日の為に携帯を充電しておかないと。


あっ――そう言えば秋さんのメールアドレス聞くの忘れてた。


今度タイミングをみて聞いてみようかな。


そんな事を考えながら携帯を手にすると、画面には着信とメールのアイコンが表示されていた。


もしかして――。


嫌な予感はあったが私はアイコンを選択し中身を確認した。


着信履歴は全て朝陽の名前で埋め尽くされていた。


心臓が痛いほど暴れだし急かされる様に呼吸が浅くなる。


だけどメールを開いて私は耐えられずトイレに駆け込んだ。


胸の気持ちの悪さと胃の突然の締め付けで嘔吐してしまった。


視界は涙で滲み体は恐怖で震えている。


心配しているメール、愛の言葉で綴られたメール、謝罪の言葉が書かれたメール、色んなメールが十数通届いていたが最後のメールは違った。



“正面玄関はもう閉められてたから出て来るのを裏口でずっと待ってたんだよ?いつ、会社を出たの?また迎えに行くね”



メールが送られてきた時間は会社を出た少し後だった。


駐車場から出る時は必ず裏口の前を通らなければいけない。


もし後部座席で隠れていなかったら――そう思うと怖くて涙が溢れ次々と零れ落ちた。






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