愛を餌に罪は育つ
梓はお水を一口飲むと、少しだけ微笑み口を開いた。



「朝陽さんには悪いけど、私は美咲が幸せならそれで良かったと思うよ」

「ありがとう。そう言ってもらえて少し楽になった。実を言うと、朝陽に対して罪悪感があって辛かったんだ」

「良くしてくれたんだもん、罪悪感が生まれたってしょうがないよ。でも付き合ってるカップルに別れが訪れる事もしょうがない事だと思うよ?悲しいし辛いことだけどね」



これで梓は朝陽と私の事を気にせずに会えるよね?


朝陽だって支えてくれる人が傍にいれば、私に執着しなくなるかもしれない。


こんな卑怯でずるい私の事なんか忘れて幸せになって欲しい。


私が朝陽の幸せを願うなんて間違ってるかもしれないけど――。



「梓は好きな人、いないの?」

「私は今はいないよ。男運がないというか見る目がないというか、まぁ今は少し休憩中」



そう言いながら笑っている梓を見て、何だか少し胸が苦しくなった。



「そんな事より、好きな人ってどんな人なの?気になるー!!」

「それが――付き合ってるんだよね――」

「えぇぇぇっ!?」



言おうかどうか悩んだが、梓にはちゃんと話しておこうと思い口を開きかけた時、後ろから翔太君の声が聞こえた。






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