愛を餌に罪は育つ
彼女の反応は予想外で同じ想いを抱いていてくれていたことが嬉しくて堪らなかった。


本当は直ぐにでも愛らしい唇に自分の唇を重ねたかった。


だが、無理矢理彼に抱かれた彼女をこれ以上傷つけたくなくて、額へ口付けをする事で何とか自分の欲望を押さえつけた。



「秋さぁん、飲んでますかぁ?」

『あぁ、飲んでるよ』

「んーでも帰りお車ですよねぇ?」

『今日はタクシーで帰るよ』



目の前で顔を赤く染めご機嫌な顔でお酒を飲む美咲は可愛かった。


未だに敬語は止めてくれないが、彼女に名前を呼ばれるだけで何でも言う事を聞いてしまいそうだ。


今まで関係をもってきた女性とは違う。


体の関係はまだないが、美咲はそれでも俺の心を十分に満たしてくれている。



『俺はそろそろ失礼するよ』

『もう帰っちゃうんですか?』

『悪いな、仕事が残ってる』

『そんなに仕事してたら頭カチコチになっちゃいますよ』



こいつのこう言う発言を聞くたびに、翔太はちゃんと仕事をしているんだろうかと心配になる。


俺にとっては可愛い後輩であり、可愛い弟のような存在だ。


視線を感じ目を向けると、今にも泣きそうな顔をして美咲が俺の顔を見ていた。






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