愛を餌に罪は育つ
突然翔太が可笑しそうに笑い出した。


それに気付いた森川さんは美咲の顔を見て穏やかな笑顔を見せた。



「副社長が帰ったら美咲泣いちゃいますよ」

『それは困ったな』

「宜しければもう少しいらっしゃるか、それか美咲も一緒に連れて帰ってもらえませんか?」



いつもは気を遣って感情を露骨に出すことのない美咲が、口を尖らせお酒をちびちび飲んでいる様を見て笑ってしまった。


こんな仕草を見てしまうと、俺のいないところでお酒を飲まないで欲しいとつい言ってしまいそうだ。



『美咲、帰ろう』

「えっ」

『仕事が終わるまで少し待っていてもらえるなら、だが』

「いくらでも待ちますっ!!」



満面の笑みで答える美咲はまるで小動物のようだった。


尻尾が見えそうなほどクリクリした目を輝かせている。


翔太と森川さんを残して、俺たちは二人でお店を後にした。


勿論会社の外とはいえ、誰に見られているか分からないため仕事中と同じ距離感を保ちながら。







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