愛を餌に罪は育つ
ホテルに着き、慎重に辺りを見渡しながら足早に美咲のいる部屋へと向かった。


ドアの前に着き美咲にメールしドアをノックすると勢いよくドアが開いた。


急いで部屋の中に入り、俺は美咲を抱きしめた。



『確認せずに開けるんじゃない』

「ご、ごめんなさい」



美咲の手を引き部屋の奥へと足を進めた。


ソファーに座り、美咲に隣に座るよう促した。



『明日の朝、このホテルはチェックアウトしよう』

「えっ?どうしてですか?」

『美咲がタクシーに乗った直ぐ後に、タクシーに乗り込む彼の後姿を見た』

「彼って――朝陽、ですか?」

『見間違いかもしれないが、もしそうじゃなければ彼にここにいる事がばれてしまっているだろう』



お酒で赤くなっていたはずの美咲の顔がどんどん青ざめていく。


手は震え、その震えを一生懸命抑えようとしている。



『大丈夫、私が傍にいる』

「は、い――」



美咲を抱きしめ安心させるように背中を擦った。


煙草の煙や食べ物の油の臭いがする店に居たというのに、美咲の柔らかい髪の毛からはシャンプーのいい香りがした。






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