愛を餌に罪は育つ
バッグを受け取り中を覗くと、ノートや手帳、財布や化粧ポーチがパンパンに入っている。


これだけ色々入っていれば、自分の事が何か分かるかもしれない。



「身元確認の為、お財布の中は見させて頂きました。他は触っていません」

「はい。あの――笠原さん」

「はい」

「さっきはすみませんでした」



さっきの事で、感情が高ぶると感情を抑えられない性格なのかもしれないと思った。



「こちらこそすみませんでした。大野さんの気持ちも考えずにズケズケと――」

「犯人、捕まえて下さいね。私かもしれませんが――――。何か思い出したらすぐに連絡します」



笠原さんも椅子から立ち上がるとオフホワイトの革の名刺入れを取り出した。


名刺を受け取ると、笠原さんは安心したようにホッと肩を撫で下ろした。



「何かあれば何時でも構いませんから連絡してください」



名刺には笠原 紅(ベニ)と書かれていた。



「綺麗なお名前ですね」

「ありがとうございます。でも、子供の頃はよく馬鹿にされたんですよ」

「子供には分からない綺麗さですもんね」



秋山さんの綺麗な顔は笑った時もやっぱり綺麗だった。






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