愛を餌に罪は育つ
同じ場所に住んでいるのに出勤は別々。


私はタクシーで秋は自家用車。


会社までの往復を電車にしたいけどまだ怖くて変えられそうはない。


でも家と会社の往復をタクシーっていい加減勿体無いよね。


いっそのこと仕事変えちゃうとか?


秋とは家でも会える訳だし――と思ったが、私は頭を左右にふり考えを改め直した。


仕事とはいえこんなに身近に秋の傍に女性がいるなんてヤダッッ!!


キーボードを打つ手を止め副社長室の扉を眺めていると、内線電話の着信音が静かな秘書室に鳴り響き私の肩はビクッと跳び跳ねた。


ちょっと音量下げよう。


心臓に悪いよ。



「はい、秘書室大野です」

「受付でございます。お疲れ様です。お約束ではないとの事なんですが、只今大野さん宛に宮沢様という男性の方がこちらにいらしております」



翔太君が?


会社までわざわざ会いに?


携帯を見るが特に連絡も来ていなかった。


何かあったのかな?



「いかが致しますか?」

「直ぐに受付に伺います」

「承知致しました」



受話器を置き、私は直ぐに秘書室を出た。


急用とかじゃなくて、翔太君の事だから近くを通ったから寄ってみたとか言いそうだ。






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