愛を餌に罪は育つ
こんな顔で帰るわけには行かない。


何処かでゆっくりして綺麗に化粧直しをして帰ろう。



「あの、すみません。○○公園の前で下ろしてもらえますか」

『はい、分かりました』



○○公園は大きな公園でドッグランなんかも設けられているから、朝から夜まで比較的人や動物で賑わっている。


今の私に頼れる友達も家族もいない。


行く場所がない。


私の居場所は秋のいるあのマンションだけ。


唯一の居場所にこんな最悪な空気を持ち帰りたくない。


お金を払いタクシーを降りると、もう二十時を過ぎていた。


それでも日が長くなってきているからか、犬の散歩をしている人やランニングしている人、カップルでまったりしている人たちで公園の中は賑わっていた。


照明もちゃんと設置されていて明るいし、それにここまでくれば安全だよね?


あんな状態で朝陽が追いかけてくる筈はないと思いつつも、振り返ればまた笑顔で立っているんじゃないかと思う気持ちもあった。


まるでホラー映画の中にいるみたい――そう思うと少しだけ可笑しく思えた。


ううん――幽霊よりもタチが悪いかもしれない。






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