愛を餌に罪は育つ

誤りと謝り

エレベーターを降りてマンション内の廊下を走った。


高いヒールと焦りのせいで足が縺れ何度も転びそうになる。


私はヒールを脱ぎ手で持つとまた部屋へ向かって足を動かした。


廊下にはカーペットが敷かれているお陰で足は痛くない。


部屋のドアの前に辿り着き、鍵を開けようと鞄の中に入れている鍵を探すが中々見付らない。


その時鞄のそこにハンカチで包まれた携帯を見て、体から血の気が引いていくようだった。


電源切って入れてるのすっかり忘れてた――。


秋から連絡が入ってなければいいんだけど――。


とにかく今は早く部屋の中に入ろう。


やっと見つけた鍵を使ってドアを開けると、玄関には見慣れた靴が並べて置かれていた。


帰ってきてる――。


足音が段々と大きくなり、こっちに近付いてくる。


どうしよう。


どうしようって言っても別に悪い事はしてないし――。


と、とにかく靴を置こう。


靴を置き目の前に立った血相を変えた秋に驚いていると、秋は何も言わずに私を抱きしめた。






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