愛を餌に罪は育つ
秋の顔が近付き、額に柔らかい感触がした。


その優しい感触のせいで余計涙が零れ落ちる。



『笑ってくれ』

「笑、えない――だってッッい、や――なの――――」

『何が?』

「私のせいでッッ秋に何かあ、ったらって――そんなの私耐えられないッッ!!そうなる前にわたッッ――」



いきなり抱きしめられ、私は秋の胸に思いっきり顔をぶつけてしまった。


そのせいで最後まで言いたい事が言えなかった。



「あ――」

『馬鹿だな』



名前を呼ぼうとした時、秋がそう呟いた。


本当に馬鹿にしているような口ぶりではなく、その短い言葉には秋の愛情がいっぱい込められていた。



『俺だって同じ気持ちだ。美咲に何かあったら耐えられない。だから俺の手の届くところにいてくれないか?』

「でも――朝陽の事だけじゃない。ストーカーもまだうろついてるかもしれないし、それに私が家族を――殺した可能性だってゼロじゃないんだよ――」

『美咲にはそんな事できない。仮にそうだとしても、愛しているよ。ストーカーたちの事は心配していない。俺が傍にいる限り美咲に手出しはさせない』



私もどうにかして秋を守る方法はないんだろうか。


それに、責任感の強い秋は無茶をしそうで怖い。






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