愛を餌に罪は育つ
加藤さんは目線を上げ、考えるように腕組をした。



『そう言えば今日あいつの姿見てないな』

「そうなんですか?今日休んでるんですかね――」

『もしかしたら事務作業に追われてて自席から動けないんじゃない?』



確かにもうすぐ月末だし、総務部は忙しいのかもしれない。



「ちょっと総務部を覗いてみます」



笑顔で頭を下げ私は総務部へと向かった。


仕事以外で総務部に行くのは初めてかもしれない。


いつも梓が秘書室に来てくれる。


私のいる秘書室は秋が居なければ私だけしかいなわけだし、居やすいんだろうな。


フロアは閑散としていた。


総務部の席に梓の姿はなかった。


体調悪くて休んだのかな――。


総務部の席でパソコンをいじっている女性に声を掛けた。



「あの、すみません。森川さんって――」

「あぁ、森川さんなら今日お休みですよ。あの、森川さんと仲が良い秘書課の大野さんですよね?」

「はい」

「森川さん今日無断欠勤で連絡がつかないんですよ。連絡がついたら会社に連絡するように伝えてもらえませんか?」

「えっ――?」



梓が無断欠勤?


梓はそんな事するような人じゃない。


嫌な胸騒ぎがして私は急いで駆け出した。





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