愛を餌に罪は育つ
秘書室に戻り、急いで副社長室をノックした。



「失礼致しますッッ」



ドアを開けると、自席で仕事をしている秋の姿があった。


私を見て驚いた顔をしている。



『そんなに慌ててどうしたんだ』

「申し訳ありません、午後お休みを頂けないでしょうか」



秋は手に握っていたペンを机上に置くと、真剣な顔付きに変わった。



『何かあったのか?』

「あず――総務部の森川さんが今日無断欠勤をしているそうなんです。彼女がそんな事をするとは思えなくて――嫌な予感がするんです」

『森川さんの家に行くのか?』

「はい」



秋は少し考える様な顔をして、すっと立ち上がった。



『私も一緒に行く』



えっ!?



「だっ、い、いけませんッッ!!私一人で大丈夫ですからッッ!!それに午後は大事な会議の予定が入っておりますのに、副社長がいらっしゃらなかったら他の参加される方々がお困りになりますッッ」



私のせいで秋の仕事に支障をきたすなんて絶対ダメ。


秋は心配して言ってくれてるんだろうけど、お荷物になるのは嫌。






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