愛を餌に罪は育つ
秋はため息をつくと、机上から携帯を取り画面を触り始めた。


そして携帯を耳に当て暫くすると、誰かと話始めた。



『今何してる?――なら車で俺の会社に来てくれないか?――あぁ、悪いな』



電話を切ると私の顔を見て秋が口を開いた。



『今から翔太が迎えに来る。ここまで十分もかからないだろう』

「えっ!?でもッッ翔太君もお仕事中じゃないんですか!?」

『あいつは自分で店を経営しているから私よりも融通がきく』



お店の経営!?


失礼だけど、意外――。



「色々とご配慮して頂きありがとうございます」



少し微笑んでお礼を言うと、秋は眉尻を下げ困った様に微笑んだ。



『仕事中のこのなんとも言えない距離感が歯痒いな』

「なっ――」



固まっている私を見て満足気に笑う秋。


思わず“私もです”と言ってしまいそうな程、秋の言葉は嬉しかった。



『連絡待ってる』

「はい」



私は副社長室を出て直ぐに帰り支度をすると、正面玄関へと向かった。






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