愛を餌に罪は育つ
私は笠原さんの目の前で同じ様に床に座り、頭を下げた。



「笠原さん、ごめんなさいッッ」

「どうして貴女が謝るんですか?大野さんは何も悪く――」



私は笠原さんの言葉を遮る様に、床に手を付き頭を横にふった。


そして梓の部屋で見たもの。


朝陽が会社に訪ねてきた日の事を話した。


重たかった空気が更に重くなり、肩や背中に重くのし掛かっている感じがする。


秋は床に片膝を付き、私の背中を優しく擦ってくれている。


翔太君は眉を寄せ、信じられないという顔をしている。



「違います」

「え?」

「野坂さんが浮気をしていたのは恐らく梓じゃなく妹の方です」

「――――」



私は言葉が出てこなかった。


妹さんって――写真に写ってた笑顔が印象的だったあの女の子、だよね――。


じゃあ私は、何の関係もない梓を巻き込んでたの?


勝手に勘違いして、梓との間に壁をつくってたの?


そんな――――。






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