愛を餌に罪は育つ
私は金縛りにあったかのように体が動かなかった。


涙がポタポタと何滴も零れ落ちる。



「私のかん、違いッッせ――いで、自殺――わたッッ――」



逞しい腕に包まれ、私は子供の様に泣きじゃくった。



「大野さんのせいじゃありません。それに梓には自殺する理由がありません」

「でも――ッッ」

「私が調べます。何故こんな事になってしまったのか――刑事として」



笠原さんの決意の籠った熱い眼を、涙でぼやけながらも私は見ていた。


梓――ごめん――本当に、ごめん――――。



『あの、美咲ちゃんも笠原さんもそんなところに座り込んでないで、とりあえず椅子に座って下さい』

『――そうですね』



笠原さんはゆっくりと立ち上がり椅子へ腰かけた。



『美咲、俺たちも座ろう』



私が頷くと、秋は私の腰を抱くように立たせてくれた。


私たちは椅子に座ってから梓が手術室から出てくるまで誰一人口を開かなかった。


重苦しい空気の中手術室から出てきた梓は、まだ顔色は悪かったが穏やかに眠っているように見えた。







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