愛を餌に罪は育つ
私たちの居る机だけが静寂に包まれていた。


朝陽へ不信感を抱いていたからか、犯人は朝陽以外考えられなかった。



「野坂さんから何かしらの接触があれば直ぐに連絡を下さい。どんな些細な事でも構いませんから」

「はい、直ぐにご連絡します」

「絶対に無茶はしないで下さい」



笠原さんは辛そうに顔を歪め、冷めかけたコーヒーを一口飲んだ。


刑事という仕事をしているから、それが辛い気持ちを大きくしているのかもしれない。



「梓にも一人で無茶をしないように言ってたんです。私がもっとしっかりしていれば――」

「違います!!私が自分の事しか考えていなかったからッッだから――ッッ」



何度も我慢した涙がとうとう頬を伝い、そしてスカートにシミを作ってしまった。



私は下を向き歯をグッと食い縛った。


鳴き声を漏らさないように。


笠原さんは私が落ち着くのを何も言わずに静かに待っていてくれた。






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