愛を餌に罪は育つ
九月八日――朝陽の様子がおかしかったと記されていた日。


九月八日――梓の妹さんが事故で亡くなった日。


九月八日――梓の妹さんの誕生日――――。


梓にとっても妹さんにとっても笑顔で過ごしていた日なはずなのに、その日はきっと梓にとって辛い日になってしまったに違いない。


本当に事故なの?


本当は貴方が突き落としたんじゃないの?


ねぇ、朝陽――貴方は一体何を望んでいるの?


何がしたいの?


もう分かんないよ――分かんない――ッッ。


私は立っていられず床に膝を付いた。


そしてベッドの端に顔を埋め声を圧し殺して泣いた。


泣いているせいで息が上手く吐けなくて苦しい。


握りしめた真っ白なシーツにどんどん皺が寄っていく。


苦しさを紛らわす様に手の力は増していく。


その時、手に温かくて柔らかい感触がして顔を上げると、枕に頭をのせたまま梓が悲しそうな顔をこちらに向けていた。






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