愛を餌に罪は育つ
頭に何かが触れている感じがして、私は目を開け体を起こした。


寝ちゃったんだ、私。


それにしても凄い体勢で寝ちゃったな――。



『大丈夫か?』



頭上から声がして顔を見上げる様に上に向けると、心配そうな顔をした秋が私を見下ろしていた。



「大丈夫だよ。来てくれたんだね、ありがとう」

『携帯に連絡しても返事がないからここに居るだろうと思ってね。ただ単に俺が心配だっただけだ』

「ごめん、いつの間にか寝ちゃって携帯が鳴ってる事に気付かなかった」




『いいんだ』と言いながら手を差し伸べてくれる秋。


その手を取ろうとした時、まだ梓と手を繋いでいる事に気付いた。


私は眠っている梓を起こさない様に、そっと握った手を離し、その手を布団の中に入れた。


私は秋の手を取り立ち上がると、梓の寝顔に「また来るね」と小さく呟き秋と一緒に病室を後にした。






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