愛を餌に罪は育つ
秋の驚いた顔が可愛くて私は笑ってしまった。


今回はいつもと逆だなと思うと少し嬉しかった。


ティーカップを取ろうと手を伸ばしたら、その腕を秋に掴まれ引き寄せられた。


私たちの体は密着し、秋の心臓の音がはっきりと聞こえる。



『今日は一日病院にいたのか?』

「うん、途中までは笠原さんも一緒にいたの」

『たくさん泣いたんだな』



やっぱり気付いてたんだ。


あれだけ泣けば顔も酷い事になってただろうし当たり前か。


私は笠原さんから聞いた話を秋に話した。


秋は私の髪の毛を触りながら聞いていた。



『もっと近くにおいで』

「えっ?」



秋は私の脇に手を通すと、子供を抱き上げるように私の体を抱き上げた。


私は秋の体を跨ぎ、向き合って膝の上に座らされた。



『今は毎日一緒にいるのに相変わらず美咲はこういうのには慣れないな』

「だって秋が――そんな目で見るから」

『そんな目って?』



俯いた私の顎を掬い上げ、そのまま親指で私の唇をなぞる秋。


秋の声も指先も体も私の心を奮わせる。


今みたいな熱を帯びた怪しく色気のある目に捉えられると、貴方の事以外考えられなくなってしまう。






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