愛を餌に罪は育つ
「今日はお仕事お休みしてごめんね。明日はちゃんと行くから」



私がそう言うと、秋は可笑しそうに声を漏らした。



「どうして笑うの?」



口を尖らせ不貞腐れた様にそう言うと、秋は口元を綻ばせながら口を開いた。



『美咲は恥ずかしい時はいつも雰囲気を変えようとするなと思ってね』

「そう、かな?」

『自覚なかったのか?それは厄介だな』



またしても可笑しそうに笑い始めた秋。


私はプイッと顔を背け、膝の上から退こうとしたら、腰に腕を回され引き寄せられてしまった。



『明日も無理せず休め』

「でも――」

『今から美咲に辛い話をしなければいけない』



秋は真剣な顔をして私の頬に手を添え優しく撫でた。


私の事なのにいつも秋は自分の事のように感じ心を痛めてくれる。


自分のせいで秋にも辛い想いをさせているのに、私は秋から離れられない。


私は弱い――愛する人を危険に巻き込みこんなに辛そうな顔をさせているのに、ずっと傍にいたいと思ってしまう。






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