愛を餌に罪は育つ
都会から少し離れただけなのに、こんなに緑が広がっているとは思わなかった。


窓を開けると心地のいい風が車内に吹き込んでくる。


気持ちがよくて髪の毛が乱れるのなんて全然気にならなかった。



『見えてきたよ』



せっかく自然の多い場所にいるというのに、そのホテルはいかにも高級だという雰囲気を醸し出していて、上手く景色に溶け込めていないように思えた。


それでもホテル内から見る景色はきっと絶景だろう。


ここにいる間は都会の喧騒を忘れられる。


辛いことや今抱えている問題も少しでもいいから忘れられたらいいな――。


ホテルに着き、車を降りるとドアマンが笑顔で迎えてくれた。


秋は荷物と車のキーを預けると、私の手を握りホテルの中へと足を進めた。


こうして外でも堂々と手を繋いで、ハラハラしなくていいんだと思うと自然と口元が綻んだ。


部屋はとても広くて綺麗で、壁一面窓なんじゃないかと思うほど大きな窓から見える景色も心が和むほど素敵だった。



『気に入ってもらえたかな?』

「すっごく!!連れて来てくれてありがとうっ!!」



私は秋の体に勢いよく抱きつき、そのまままた外の景色に見とれた。


秋も可笑しそうに笑いながらも一緒にその景色を堪能していた。






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