愛を餌に罪は育つ
お腹に回された腕に力が入り、更に背中に秋の肌を感じた。


首の後ろに柔らかい感触が落ちてきて、私の体は強張った。



『悪かった』

「えっ――?」

『彼女に好意を持たれている事には気付いていたが、相手にしていなかったし、仕事だからと二人で食事もした事はないよ』



顔を後ろに向けると、あんなに酷い態度を取った私に微笑みかけてくれる秋。



「ごめんなさい――」

『美咲は悪くない。俺が大人気なかったんだ』

「お願いだから――これ以上私を甘やかさないで。日に日に我儘で嫌な女になっていってる気がする」



秋は可笑しそうに声を漏らして笑うと、ギュッと私を抱きしめ私の頭にキスをした。



「笑い事じゃないよっ!!これ以上症状が悪化したらどうするの!?ちゃんと分かってる!?」

『あぁ』



笑いながら返事するなんて絶対分かってない。






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