愛を餌に罪は育つ
「ずっと気になってた――私の前に秋の秘書をしてた女の人の事が」

『気にする必要がないだろう』

「綺麗でスタイルもよくて仕事もできる。そんな風に周りから聞いたら気になるに決まってる」

『俺が彼女と関係を持っていたかどうか?』



私は微笑み秋の唇に自分の唇を重ねた。


唇を離し腕を首に回した。


後数センチで唇が触れてしまいそうな程近くに秋の綺麗な顔がある。



「ただのヤキモチだよ。過去の女性にすら嫉妬してる。それも勝手な想像を膨らませて。私どうしようもないくらい心が狭いみたい」

『それでいい』



普段だったら言えないのに今言えたのはお酒を飲んでいるから。


お酒の力を借りる事になるとは思ってもみなかった。


秋の唇が首筋から鎖骨まで優しく下りてくる。


唇の感触が移動する度に口からは驚くほど甘い声が漏れてしまう。


自分の声じゃないみたい。



「のぼせ、ちゃう――」

『そうだな、続きはまたベッドの上ですることにしよう』



ベッドの上で――。


その言葉の響きに緊張しながらも、胸には嬉しい気持ちが広がっていた。






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