愛を餌に罪は育つ
背中にシーツの冷たさを感じ鼓動が早くなる。


はだけた浴衣から覗く秋の胸元は、スタンドライトのオレンジの光に照らされ、いつも以上に色気を感じさせた。


指を絡め握られた右手。


もて余している左手は秋の頬に添えた。


秋は私の目を捉えると、眉尻を下げる様に微笑んだ。



『今日は止めておこう』

「ど、して?」



秋の言葉に一気に不安が込み上げてきた。


目頭が熱くなり、今にも涙が出てしまいそうだった。



「私とじゃそんな気にッッなら、ないって事?」

『そうじゃない。彼にされた事を思い出しているんじゃないのか?』

「――え?」

『体が震えている』



朝陽にされた事――。


手首を頭の上で押さえつけられて無理矢理抱かれた。


痛かった事。


惨めだった事。


辛かった事。


そんな類いの感情で埋めつくされていたからか、あの日の出来事は所々記憶が飛んでいる。


思い出そうとすると気持ち悪くて自分の体がどんどん汚くなっていくような感覚に教われた。






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