愛を餌に罪は育つ
秋の唇が啄む様に体をなぞる。


恐怖なんてなかった。


言葉がなくても伝わってくる。


秋の優しさや温もりが。


私の顔を見下ろす秋の目はゾクッとする程艶やかで、私の目を捉え離そうとはしなかった。



『まずいな』

「え――?」

『反応が可愛くてつい苛めたくなる』

「ッッ――」



秋の手が私の一番敏感なところに触れ、ビクッと体が自然に反応する。


秋は妖艶な笑みを浮かべ、私を快楽の中へどんどん引きずり込んでいく。


私は腕を伸ばし秋の首に絡めるとキスをせがむように体を浮かせた。


甘い声と甘い吐息が交ざり合い、重なる唇からこぼれ落ちる。


だけど心と体が快楽に支配されながらも、頭の中では知らない男性の体がちらついていた。


秋の体でも朝陽の体でもない。


貴方は一体誰なの――――。






< 275 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop