愛を餌に罪は育つ
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目の前には思わず見上げてしまうほど高く立派なビル。


フロアで借りてるとかじゃなくて、これ全部が会社なの?


昨日のやる気が嘘のように今は帰りたい気持ちにやる気が押されている。


家が燃やされ荷物は持っていた物だけになってしまった為、私は新しくスーツ、フォーマルパンプスその他諸々買い揃えた。


ある程度貯金もあったし、暗証番号を忘れてしまったが運転免許証や印鑑など、身分を証明できるものがあった為、お金を引き出すことが出来た。


本来であれば悲しみにうちひしがれていても可笑しくない状況なのに私は今平然とスーツを身にまとい、平然と立派なビルを見上げている。


入院していた時に家族の死亡診断書を受け取り、整理できていない頭を使いながら記入した。


勿論私一人では分からない箇所だらけだった為、朝陽に手伝ってもらいながら――。


そして退院早々死亡届けを提出する為に役所へ向かった。


代わりに火葬許可証をもらったが、既に焼かれた三人を更に焼くのかと思うと、自分が酷く残酷な人間の様に思えた。


火葬はしたけどお通夜もお葬式もしていない。


お悔やみを言われたところで誰が誰だか分からないし、返す言葉も見つからないだろうから――。





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