愛を餌に罪は育つ
料理を食べ終え笠原さんとテレビでワイドショーを見ていると、梓がみんなの分のコーヒーを持ってきてくれた。



「このマグカップ可愛いね」

「実は三人お揃いなんだよ」



言われて三個のマグカップを見ると色ちがいのお揃いだった。


笠原さんは赤で梓はピンク、私は白だ。



「これ見た瞬間二人の顔が浮かんじゃって買っちゃったの」



そう言いながら笑顔を見せる梓に、笠原さんは優しい眼差しを向けていた。


梓と笠原さんは同い年なのに、笠原さんの方がお姉さんの様だ。



「梓?」



さっきまでにこやかだった梓の顔は段々と雲っていき、瞼を伏せてしまった。



「ちゃんと――話、たくて、それで美咲にも来て、もらったの――」

「梓――」



落ち着かないのか、梓の祈るように握られた手が忙しなく動いている。


そして酷く怯えた目をしていた。



「梓、無理しなくていいよ。今は自分の心を優先した方がいい」



笠原さんの言葉に首を横にふる梓。


その姿を見て心臓が締め付けられるようだった。






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