愛を餌に罪は育つ
梓は震える唇を開き、ポツリポツリと話始めた。



「一人でよく行くbarがあって、あの日も一人でそのbarで飲んでたの。その日は何だか苛々してていつもよりお酒をたくさん飲んじゃって――」



その日の行いを悔やんでいるかのように、下唇を噛みしめている梓。



「凄く酔っぱらってて、立ってるのが精一杯だった。鍵を開けてドアを開けた瞬間後ろから口を塞がれて首に冷たい感触がしたの」

「やっぱり刃物で脅されたのね」

「はっきりと見たわけじゃないけど、そう――だと思う」



梓がされた事を想像しただけで恐怖が込み上げてくる。


だけど梓は今の私の恐怖とは比べ物にならないくらい怖かったと思う。



「その人も一緒に部屋に入ってきて――自分のいう通りに手紙を書けって言われたの。首に冷たい物をあてられたまま――お酒と怖さで手が凄く震えてた様な気がする――」



そう言えば笠原さんが手紙に書かれていた文字はとても歪んでいたと言っていた。


脅されてる上にあんな内容の文章を書かされれば、誰だって恐怖で手どころか体が震えてしまう。






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