愛を餌に罪は育つ
自分と向き合う様に鏡の前に立ち、化粧直しを始めた。


グロスやアイシャドウ、顔を彩らせるだけで気持ちを切り替えられるのは女の特権だと思う。


戦装束とでも言うのかな?


そんな格好いいものでもないけど、自信のない化粧をしているときは不思議と人の目を見て話すことができない。


最後にグロスを塗り、馬鹿みたいに鏡に映る自分に笑って見せた。



“最後なのに、雪――見れなかったね”

“そうだね、でもそれでよかったのかもしれない”

“そんな悲しい事を言う人だと思わなかった”



私は誰かと肩を並べて窓越しに夜空を見上げていた。


雲一つない綺麗な星空を――。


肩にほんの少し温もりが触れた様な気がしてハッとした。


綺麗な星空どころか目の前には情けない顔をした私がいた。


今の――私の記憶?


胸には気付けば寂しさが広がっていた。


隣にいた人は凄く大切な人の様な気がする。


だけど、恋人に対する大切な想いとは少し違う感じがした。






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