愛を餌に罪は育つ
コーヒーを持って戻ると、上着をラックにかけながら早速資料に目を通してくれていた。


帰ってきたばっかりなんだから少し休憩すればいいのに。


私が居てもコーヒーを飲みながら資料から目を離さないんだろうな。


邪魔したら悪いと思い、何も言わずコーヒーをテーブルの上に置いた。



『ありがとう』

「いいえ」



私がソファーに腰掛けると、秋もソファーに腰掛け資料を鞄の中にしまってしまった。


今回はいつもより資料分厚かったのにもう読んじゃったの!?


信じられない。



『どうした』

「いえ、もう読んで下さったんだなと思いまして――」



秋は目を細めフッと微笑んだ。



『まだ途中だ。残りは家で読ませてもらうよ。こうしてここで話をするのは久しぶりだからね』

「す、すみません――」



秋の優しい目に見つめられ、恥ずかしさのあまり何故か謝ってしまった。


可笑しそうに笑われてしまった。


なんでこう一々嬉しい事言ってくれるんだろう。


嬉しいからいいんだけど、本当に秋は私のいろんなツボをおさえていると思う。






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