愛を餌に罪は育つ
総合受付のある一階部分以外はダークグレーのカーペットが敷かれていて、足音が響かない様にされていた。


ヒールの高い靴を履いている私にとっては足の負担が軽減されて嬉しいかも。



「今日から三日間は研修をするので、実際に秘書業務に触れてもらうのはそれ以降になるわ」

「研修ですか?」

「えぇ。研修と言っても弊社の会社概要だったりマナーや敬語といった基本的な事をするだけだから、そう力まなくても大丈夫よ。大野さんは中途採用だから問題ないと思うしね」



マナーや敬語、一般常識なんかは一応ちゃんとしているつもりだけど、改めて研修をすると言われると変に身構えてしまう。


歩いていると前にある窓が段々と大きさを増していき、そこから見える景色もはっきりと見えてきた。


流石は最上階。


都会の中とは言え見晴らしは素晴らしいものだった。



「採用の連絡をした段階では執行役員の秘書をお願いしていたんだけれど、急遽他の方に就いてもらうことになったの」

「そうなんですか?」



執行役員の秘書をやるという事は、こうして増田さんが言ってくれなかったら私は挨拶をするまで知らなかった事だろう。


勿論秘書を就けるくらいだから偉い人って事ぐらいは分かってたけどね。






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