愛を餌に罪は育つ
部屋にあからさまにカメラが取り付けられているところはない。


特に違和感のない部屋だ。



『いつ、気が付いた』

『一月ほど前から妙に見られているような感じがして部屋を調べさせた』

『調べた?嘘だッッ!!そんな事をすればお前にバレてる事に僕が気付かないはずがないだろッッ』



秋は面倒くさそうにため息を吐くと、自席の椅子に腰を下ろした。



『お前は馬鹿か。あからさまに分かる様に調べるわけがないだろう。清掃員のふりをさせて調べさせた』



嘲笑うように顔を歪めた秋は朝陽の目を見据えた。


朝陽は蛇に睨まれた蛙のようだ。



『照明のところにカメラを仕掛けるとは、またベタなところに取り付けたものだな』

『なッッ――』

『二度と美咲に関わるな』

『それは僕の台詞だッッ!!美咲は僕を愛してるんだッッ!!僕をッッ!!』



秋はやれやれと言いたげに呆れた顔をした。


朝陽は秋を直ぐにでも襲える距離にいるのにそうはしない。


動けば返り討ちにされてしまいそうな程、秋が黒く危ない空気を身にまとっているからかもしれない。






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