愛を餌に罪は育つ
『一つ知りたい事がある』

『――――』

『お前は誰だ』

『ふざけてんのかッッ!?僕は野坂 あさ――』

『それはお前が殺した男だろう』



朝陽の顔は青ざめ、そのまま固まってしまった。


朝陽の事はお構いなしに秋は喋り続けた。



『去年のクリスマスの昼頃、野坂 朝陽の元にキャップを深く被りマスクをつけた男が訪ねた。その男は部屋に上がるなり野坂 朝陽の頭をその場にあった置物で殴った。倒れて意識のない――いや、もう死んでいるかもしれない彼を何度も何度も――』

『お前、の言ってるこ、とはでたらめだッッ』

『キャップとマスクを外した男を見て正直驚きを隠せなかったよ。その男は殴り殺されたはずの野坂 朝陽と全く同じ顔をしていたんだからな。それがおま――』

『黙れ黙れだまれッッ!!!!』



朝陽は両手で耳を塞ぎ気が狂った様に激しく首を横にふった。


その姿は同情してしまいたくなる程滑稽で哀れだった。






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