愛を餌に罪は育つ
『野坂 朝陽の死体を持ち込んだと言ったな。だが焼け跡から見付かった死体は美咲のご両親とお兄さんだと警察が確認をとっている。どういう事だ』



警察の調べによると、歯の治療痕が一致したと言う話だった。


治療痕が一致したということは、ほぼ百パーセント本人であることに間違いはない。



『何の為に放火したと思ってんの?証拠を消す為だとでも?違うね。どんだけ顔と体をズタズタにしても、解剖やら何やら検査されたらバレんだろうが、野坂の死体だってよ』

『カルテを偽装したのか。単純な奴かと思えば案外頭を使っていたんだな』



秋は感心したような口振りだったが、どこか馬鹿にしているようにも聞こえた。



『偽装?そんな面倒くせぇ事するかよ。野坂と圭の治療記録のカルテを入れ替えただけだ』



男は美咲の兄を“圭”と下の名で呼んだ。


下の名で呼ぶ程の仲だったのだろうか。


圭という名を聞いても誰なのかたずねなかったところを見ると、秋はその人物が誰なのか既に知っていた様だ。



『部外者がそう易々とカルテを入れ替えられるとは思えんな』

『部外者じゃねぇよ。入れ替えたのは圭だからな』






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