愛を餌に罪は育つ
「あっ――」

『どうした』

「仕事探さないと――」



私は体を横に傾け、そのままベッドに寝転がった。


下から覗いた顔も格好いい。


私にとって秋は底無し沼だ。


もう私は脱け出せないしもがく気もない。


上手く身動きがとれないけれど、それが幸せな柵だと知っているから。



『別に探す必要はないだろう』

「どうして?」

『ここに居れば不自由はないと思うんだが』

「確かにそうだし、両親のお陰で貯えも多少あるけど――欲しいものだったり娯楽に使うお金くらい自分で稼ぎたい」



秋は覆い被さる様に私の上に股がり、綺麗な顔で私を見下ろした。


本当に見とれてしまう程綺麗だ。



『そんなに自立したいのか?』

「自立というか、一緒に住んでて生活費だったり家賃は全部秋が出してくれてるのに、働きもしないで好き放題やるなんて申し訳ないし情けない」



家賃は半分出してって言われても私の給料全部渡しても無理だけど。



『俺がいいと言うまで目を瞑っててくれ』



耳元で囁かれ、その声に酔いしれるように目を閉じた。






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