愛を餌に罪は育つ
ん――っ。


誰?


私の肩を揺らしてるのは――。


重たい瞼をうっすら開けると光が入ってきて、また直ぐに目を閉じた。


体を縮こませるとクスクス笑う声が聞こえて、私はまた眩しい中眉間に皺を寄せながら目を開けた。



「――――」

『ただいま』

「――お帰り」



目の前には大好きな秋の顔。


ソファーに頬をくっつけ寝てしまった私と目線を合わせる様に、床に膝をついて座っている秋。


両手を伸ばすと笑いながら抱き起こしてくれた。


私をソファーに座らせると、秋は私に背を向けた。


何処かに行こうとした秋の手を掴んだ。



『美咲?』

「もう少し目が覚めるまで居てくれない?」



隣に腰を下ろした秋にピタッとくっつき、腕を絡ませ寄っ掛かった。



『そうやって甘えられるのは久しぶりだな』

「ホラー見てたら怖くなっちゃって――寝ても怖さって取れないみたい」

『怖いのに一人で見たのか?』

「途中で寝ちゃったけどね」



秋は呆れた様に笑い、私の頭にキスを落とした。





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